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秋のマラソンで自己ベストを出したければ春先に1500mを走るべき5つの理由


 春の訪れとともに、陸上界ではいよいよ「トラックシーズン」が開幕です。 市民ランナーの皆様の中にも、秋のフルマラソンに向けて、この春からどのようなトレーニングを積んでいくべきか、悩まれている方は多いのではないでしょうか。


 「秋にサブ3を達成するために、春から毎週末30km走をやるべきか?」 「今のうちから月間走行距離を伸ばして、スタミナの土台を作るべきか?」


 もしあなたが今、そのような「マラソンに向けた直接的な練習」ばかりを思い浮かべているのだとすれば、今日のメルマガはあなたのレース結果を良い意味で変えるきっかけになるかもしれません。


 本日のテーマは、「秋のマラソンで壁を越えたいなら、春先はあえて『1500m』のレースに出場(または特化)することをお勧めする理由」です。


 「え? マラソンのタイムを伸ばしたいのに、たった1500mの練習をするの? 距離が短すぎない?」 

「持久力が落ちてしまうのではないか?」


そう思われるのも無理はありません。


 しかし、運動生理学とトレーニング理論、そして「私自身の実体験」を紐解いていくと、春先に1500mのスピードを極限まで磨くことこそが、秋の42.195kmで想像以上の結果を叩き出すための「最短距離」であることが分かります。


 本日は、長距離走・マラソンにおけるトレーニングの秘密を、説明していきます。これを読み終えた時、あなたの明日の練習に向かう意識は確実に変わっているはずです。ぜひ、最後までお付き合いください。


導入:なぜ今、「1500m」というテーマを取り上げるのか?

 日本のマラソン界、特に市民ランナーの世界では、「マラソンが速くなりたければ、とにかく長い距離を走り込みなさい」という考え方が根強く残っています。 確かに、過去のメルマガでもお伝えした通り、マラソンにおいて「有酸素ランニングの積み重ね(量)」と「距離走」は絶対に欠かせない要素です。


 しかし、ここには一つの大きな落とし穴があります。 それは、「一年中ずっとマラソンの練習(長い距離を同じようなペースで走る練習)ばかりをしてしまう」ということです。


 トレーニングの絶対的な原理原則として、人間の体は「同じ刺激」をかけ続けると、やがてその刺激に適応しきってしまい、成長が止まります。さらに、マラソンペースという「比較的遅いペース」ばかりを反復していると、脳と神経筋はその遅い動きを学習してしまい、いざレース本番で「もう少しペースを上げたい」「後半に切り替えたい」と思った時に、体が反応しなくなってしまうのです。


 世界で活躍する一流ランナーたちを見てください。彼らは一年中マラソン練習をしているわけではありません。彼らの1年間は明確に「期分け(ピリオダイゼーション)」されています。 レースから遠い時期(春〜夏)に基礎的なスピードや最大酸素摂取量を高め、体の「器」自体を大きくする。そしてレースが近づくにつれて(秋〜冬)、その大きくなった器の中に「マラソンを走り切るためのスタミナ」をたっぷりと注ぎ込み、特異的(実戦的)な練習へと移行していくのです。


 市民ランナーの多くが陥る「伸び悩み」の最大の原因は、この「器を大きくする作業(スピード強化)」を疎かにし、小さな器のまま、ひたすらスタミナという水を注ぎ足そうと四苦八苦していることにあります。


 私自身も19歳からマラソンを始め、2時間27分を記録し、長い距離をひたすら走るようなトレーニングが速くなる方法と思い込んでいました。2時間、3時間のロングジョグばかり行ったり、実践的な練習とのバランスが取れていませんでした。その結果、初マラソンが自己ベストという状態が3年ほど続き、納得のいかない苦しい経験をしました。つまり、ゆっくり長く走ることを1年通して行うのではなく、今何を鍛える時期なのかを明確にして、段階的にトレーニングにあたることが長距離走で最短で結果を出す方法です。


 だからこそ、トラックシーズンが開幕するこの「春先」という絶好のタイミングで、私はあなたに「一度マラソンという距離の呪縛から離れ、1500mに挑戦してほしい」と強く提案したいのです。

1500mに挑戦することがマラソンに絶大な効果をもたらす「5つの理由」

 では、なぜ数ある種目の中でも「1500m」なのでしょうか?5000mでも10000mでもなく、あえて1500mに特化することが、秋のマラソンにどのような運動生理学的メリットをもたらすのか。5つの視点から解説します。


理由1:陸上競技の「究極の基礎」を構築できるから

 陸上競技の本質とは、「ある決められた距離をできるだけ速く走ること」です。では、その「基礎」とは何でしょうか? 弊社代表の池上は、あらゆる名著や名指導者の教えから、陸上競技の基礎を次のように定義しています。 

 「レースよりも短い距離を、レースペースよりも速く走ること。そして、レースよりも長い距離を、レースペースよりもゆっくり走ること」


 マラソンランナーにとって、「長くゆっくり走る基礎(LSDやロングジョグ)」は皆さん真面目に取り組みます。しかし、「短く速く走る基礎」はどうでしょうか? 1500mという種目は、中長距離走において「短く速く走る」ことの極致です。1500mのレースペース(あるいはそのペースでのレペティショントレーニング)を体に叩き込むことは、マラソンランナーにとって最も強力な「基礎スピードの構築」になります。この圧倒的な基礎スピードの土台があるからこそ、その先の5000m、10000m、そしてマラソンのタイムが底上げされていくのです。


理由2:「ランニングエコノミー(走りの経済性)」が劇的に向上し、余裕度が生まれるから

「1500mのペースなんて速すぎて、マラソンには関係ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、実はこの「速すぎるペース」に体を慣らしておくことこそが、最大の武器になります。


 人間の脳と神経筋は、一度「非常に速いペース(速い動き)」を学習すると、それよりも遅いペースを走った時に、心理的にも肉体的にも「余裕」を感じるようにできています。 例えば、あなたが1500mを5分00秒(キロ3分20秒ペース)で走るためのトレーニングを積んだとします。その苦しさと脚の回転の速さを脳が記憶すると、秋にマラソンペースである「キロ4分30秒」で走った時、脳は「なんてゆっくりで楽なペースなんだ!」と錯覚します。


 この時、体は無駄な力みを一切排除し、最もエネルギー消費の少ない効率的な動きで走るようになります。これが「ランニングエコノミーの向上」です。 「半分寝ていてもそのペースで走れる」という無意識の効率的な走りを手に入れるには、ダラダラと長く走るだけでなく、脳に「1500mの圧倒的なスピード感」を経験させておくことが一番の近道なのです。


理由3:「有気的代謝」のエンジンの最大出力を限界まで引き上げられるから

「1500mは無酸素運動だから、有酸素運動であるマラソンには意味がない」というのは、運動生理学における大きな誤解です。 実は、1500mという種目においても、エネルギーを生み出す代謝の割合は「有気的代謝(酸素を使う回路)が約60〜70%、無気的代謝(酸素を使わない回路)が約30〜40%」と、圧倒的に有酸素の力がモノを言う種目なのです。


 1500mのトレーニングでは、この有気的代謝を「最大回転数」で回し続けます。春先に1500mの練習で酸素を取り込みエネルギーに変換する能力を極限まで高めておけば、秋にマラソンペースに落とした時、その強大なエンジンを「わずかな出力」で回すだけで済むようになり、30km以降のガス欠を防ぐことにも繋がります。


理由4:レース終盤に必要不可欠な「耐代謝性アシドーシス(血液の酸性化に耐える力)」が養われるから

 マラソンの終盤、35kmを過ぎたあたりで脚が鉛のように重くなり、動かなくなる現象。これは糖質の枯渇だけでなく、筋肉内に疲労物質(乳酸など)が蓄積し、細胞が「酸性化(アシドーシス)」することによって筋肉の収縮が阻害されるためにも起こります。

 1500mのレースや、それに向けたインターバルトレーニングでは、血中乳酸濃度が極限まで跳ね上がり、体中が強烈な酸性状態になります。この「苦しさの極致」に何度も体を晒すことで、細胞は酸性化に対する強力な「緩衝能力(耐性)」を獲得します。 「こんなに酸性になっても、まだ脚を動かせるぞ」という耐性を春先に作っておくことで、秋のマラソンのラスト7.195kmの死闘において、他のランナーが次々と失速していく中、あなただけが力強く脚を前へ進め続けることができるのです。


理由5:「レペティショントレーニング」は実は疲労が残りにくく距離走と両立できるから

 「そんな激しいスピード練習をしたら、疲労でジョグや距離走ができなくなるのでは?」と心配される方もいるでしょう。 しかし、1500m向けの代表的な練習である「レペティショントレーニング」(例えば、300mや400mを全力に近いペースで走り、疾走時間の2〜4倍の長い休息をしっかり取ってから次を走る練習)は、実は非常に理にかなっています。

 ジャック・ダニエルズ博士も著書で述べている通り、レペティションは完全に呼吸と血中乳酸濃度を回復させてから次を走るため、脳と神経筋に「正しい速い動き」だけを記憶させることができ、乳酸の蓄積による過度な疲労(ダメージ)を翌日に持ち越しにくいという特徴があります。 そのため、1500mのスピード強化を行いながらも、並行して週に数回のジョグや中強度走といった「有酸素の土台作り(走行距離の確保)」を両立させることができるのです。

実体験:1500mへの「特化」がマラソンPB3分更新を生んだ

 ここまで運動生理学的な理論をお話ししてきましたが、これは決して机上の空論ではありません。私自身がこのアプローチによって、自己ベストを更新した実体験があります。

 それは2020年にまでさかのぼります。私が大学の陸上競技部を引退した直後のことです。 私は翌年(2021年2月)の「第76回びわ湖毎日マラソン」で結果を出すことを最大の目標に掲げていました。 しかし、春先(4月〜6月)は故障に苦しみ、まともに走ることができませんでした。

 ようやく本格的に走れるようになった8月。通常であれば「2月のマラソンに向けて、早く走り込み(距離走)をしなければ!」と焦るところです。 しかし、私はここで「あえてマラソンの練習(距離走)を一切やらない」という決断を下しました。 コロナ禍で秋のマラソン大会が開催されないと推測したこともありますが、何より「今の自分のスピードの器のままマラソン練習をしても、絶対に限界が来る」と直感していたからです。


 私は8月〜10月の3ヶ月間、岐阜県の御嶽(標高の高い高地)にあるスポーツ施設で、住み込みで働きながらトレーニングを行いました。 朝4時半に起き、朝練をしてから、掃除機がけ、風呂掃除、トイレ掃除、皿洗い、客室清掃といったアルバイトをこなし、その合間に走るという、まさにハングリー精神で駆け抜けた日々でした。


 この3ヶ月間、私は「1500mに専念して絶対的なスピードを引き上げる」ことだけを目標にしました。 ポイント練習は、300mや400mのショートインターバルやレペティショントレーニングが中心です。 例えば、9月には (400m+300m+200m)×2 というような、1500mのレースペースを想定した強烈な無酸素系のスピード練習を、高地の薄い酸素の中で血の味がするほど追い込んで行いました。40km走などの長い距離走は一度もやりませんでした。


 そして迎えた11月。いよいよびわ湖に向けた「マラソン期」への移行です。 ここで驚くべきことが起きました。 夏場に1500m特化の練習で「究極のスピードと心肺機能の器」を作り上げていた私の体にとって、マラソンに向けたキロ3分20秒〜30秒というペースが、余裕を持って感じられたのです。

 11月、12月はあえてペースの速い距離走はやらず、30〜40kmの「ロングジョグ(キロ5分」で徹底的に有酸素の土台(毛細血管とミトコンドリア)を作り直しました。 スピードの器はすでに夏に極限まで広げてあります。あとはその巨大な器に、怪我をしないようにスタミナを注ぎ込んでいくだけでした。合わせて5000mを5〜6セットマラソンのレースペースで行う練習も取り入れました。


 そして2021年2月28日、第76回びわ湖毎日マラソン当日。 私はスタートから、キロ3分20秒〜25秒というペースを「極めてリラックスした無意識の状態」で刻み続けることができました。 30kmを過ぎても、私の脚はまだ力強く動いていました。「周りの選手が落ちていく中、過去のどのレースよりもきついけど前を追える」。あの時のこの感覚は今でも忘れられません。 結果は、2時間23分28秒。約2年ぶりのマラソンで、自己ベストを3分03秒も更新するという大飛躍を遂げたのです。


 もしあの時、私が焦って夏場から「マラソンのための距離走」ばかりをやっていたら、この結果は出ませんでした。1500mという究極のスピード種目に特化し、ランニングエコノミーと最大酸素摂取量を極限まで高めるという「遠回りに見える最強のショートカット」を選んだからこそ、私は壁を越えることができたのです。


 いかがだったでしょうか。 秋のマラソンで結果を出すために、あえて春先に1500mのレースに出場すべき理由を、運動生理学の理論と私の実体験からお話しさせていただきました。


 「フルマラソンを速く走るために、1500mを走る」 一見すると矛盾している(パラドックスの)ように聞こえるかもしれません。しかし、長距離トレーニングを「負荷と適応」「一般性と特異性」「質と量」という3つのアンチノミー(二律背反)の調和という視点から俯瞰して見ることができるようになれば、このアプローチがいかに理にかなった、極めて知的な戦略であるかがお分かりいただけるはずです。


 もしあなたが今、マラソンのタイムに伸び悩んでいるのであれば、それは「あなたの努力が足りない」からではありません。「やっているアプローチがマラソン練習(特異性)に偏りすぎている」からです。


 今までの自分の常識(コンフォートゾーン)の中に閉じこもっていては、新しい結果は絶対に生まれません。 「自分はマラソンランナーだから、短い距離は関係ない」という心理的盲点(スコトーマ)を外し、あえて現状の外側にある「1500mのスピード」という未知の領域に飛び込んでみてください。


 春先のトラックで、1500mのスタートラインに立ち、号砲とともに脱兎の如く風を切る。その鮮烈な体験と細胞への強烈な刺激が、半年後の秋、あなたを想像もしていなかったようなマラソンの自己ベストへと導いてくれるはずです。


「でも、具体的に1500mに向けてどんなメニューを組めばいいのか分からない」

 

「スピード練習とスタミナ練習のバランス、期分けの仕方を体系的に学びたい」


そう思われた、知的探求心に溢れるあなたに朗報です。 弊社代表の池上が15年間の競技生活での数々の失敗と成功、そして世界中の名指導者たちから学んできた「トレーニング、リカバリー、心の使い方」のすべてを、30時間以上の動画講義に体系的にまとめ上げたのが、『ウェルビーイングオンラインスクール』です。


 1500mからフルマラソンまで、距離は違えど根底に流れる「普遍的なトレーニングの原理原則」は全く同じです。「なぜその練習をやるのか?」「どう組み合わせればピークを作れるのか?」という、表面的なメニューの奥にある本質を徹底的にお伝えしています。


 もしあなたが本気で現状を打破し、最短最速で目標を達成したいと願うのであれば、ぜひこの「日本一のランナーのための学び場」の門を叩いてみてください。正しい知識という武器は、必ずあなたの努力を最高の結果へと変換してくれます。 あなたが本気で今年のマラソンで自己ベストを出したいのであればこちらをクリックして内容をご確認ください。


春のトラックシーズン、あなたの眠っているスピードの遺伝子を呼び覚ます最高のチャンスです。 恐れずに新しい刺激を楽しんでいきましょう! 


 
 
 

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筆者紹介

​ウェルビーイング株式会社代表取締役

池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

© 2020 by ウェルビーイング株式会社

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